TAKUPONLOG

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「ハード」から「ソフト」への移行

 東日本大震災福島第一原子力発電所事故による被害について調べている過程で、興味深い書籍に出会いました。 それは下記の書籍で、阪神・淡路大震災に於ける高齢者を研究したもので、現在日本が直面している少子高齢化の問題などを、阪神・淡路大震災で被害を受けた高齢者の生活を通して考察しているものです。(高いですが、良書だと思います。)

  

 

大谷/順子

九州大学大学院言語文化研究院・人間環境学助教授。九州大学アジア総合政策センター協力教員。神戸女学院大学を経て、大阪大学歯学部卒業。ハーバード大学修士課程修了。Master of Public Health:MPH(国際保健)及び、Master of Science:MS(人口学)。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)Health Policy Dept.及びロンドン大学経済政治大学院(LSE)Social Policy and Administration Dep.博士課程修了。Ph.D.取得。世界銀行、世界保健機関(WHO)などの勤務を経て、2005年4月より現職。専攻は国際保健・人口学、社会開発学、社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 

 

 この書籍の著者である大谷は長い年月をかけて、阪神淡路大震災で被害を受けた方の仮設住宅、復興住宅の高齢者を調査し、高齢化社会におけるコミュニティのあり方、ジェンダーなど考察しています。その中でも私が興味をもったのは、復興住宅でのフィールドワークであり、時間の経過によって問題は「ハード面」から「ソフト面」へ移行するという記述です。

 

震災直後は、震災により住まいを失った人達への住居の提供が最重要事項となっていました。しかし、震災から月日が経過していく内に、その問題よりも、居住区に住んでいる人達の生活環境そのものや精神的要素などに重点が置かれ、QOLの向上が目的となっっていったと記述しております。そして、この問題は東日本大震災の今後の問題にも関係しうるものであると考えられます。

東日本大震災の今後の課題とは

 前述でも、大谷が指摘した通り、今後東日本大震災の問題は「ハード面」から「ソフト面」へ移行していくと想定されます。すでに、その時期へと移行しているかもしれません。

 

上記の阪神・淡路大震災東日本大震災の大きな違いは「自然災害」と「人為的災害」であると言えます。東日本大震災の最も大きな被害は、福島第一原子力発電所事故により大きな避難者を生み出したことにあります。そして、人為的災害は精神的に自然災害よりも多くの精神的苦痛を生み出す調査も多々あります。そして、その2次的被害として数多くの自殺者を生み出し、今後もその影響は継続すると想定されます。しかも、その影響は高齢者に多く見られます。

 

東日本大震災に関連する自殺者数  内閣府,2014 

(http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/pdf/h2607/s3.pdf

 

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「余裕」もたらす悪影響

 避難所でのインタビューを実施した際、心に残った言葉は「余裕ができた」という言葉です。震災当初は、食料、住居、金銭的にどうするかなど「ハード面」を重視することが多かったらしいですが、震災から数年立つとそれ以外の問題、つまり「今後どう生活していくか」など考える余裕が生まれ、物質的なもの以外を欲するようになったと述べられていました。本来、余裕とは良い意味で使用されることが多いはずです。しかし、この余裕が、多くの自殺者を生んだとも考えられます。

今後の東日本大震災への取り組みについて

 この他にも、現場で感じたのは「孤独」による「悲しみ」など精神的な問題です。そうなれば、私達が取り組むべき問題は、阪神・淡路大震災同様に、ハード面よりもソフト面なのかもしれません。本来良いとされる「余裕」が生み出したこの事実に考える必要があるのかもしれません。

 

追記)

物質的問題が解決するそれ以外の問題が生じる。それが「ハード」から「ソフト」への移行というわけですが、その事実を認識する必要があるかもしれません。